【アメリカ】住宅の夢が遠のく?全米で進む固定資産税・保険・HOA費用の上昇

家を持つことが「安定」とは限らない時代に

ハワイで暮らす私にとって、「マイホームを持つ」というのは今も昔も多くの人が憧れる目標のひとつです。ただ、最近ではその夢がますます手の届かないものになってきていると感じています。物価の高騰に加え、住宅ローンの金利も高止まりしており、購入時の負担が大きいのはもちろん、購入後も予想以上の出費が待ち受けています。最近の調査を見て、あらためて「家を持つコストは購入後も続く」という現実を痛感しました。固定資産税や保険料、HOA(Homeowners Association=住宅管理組合)費用の上昇は、日々の生活に確実に影響を及ぼしています。特に中・低所得世帯にとっては、このようなコストの増加が暮らしを直撃しているようです。今回は全米で起きている住宅コスト上昇の現状と、その影響についてまとめてみました。





固定資産税の上昇が止まらない

LendingTreeによると、2021年から2023年にかけて、全米の固定資産税の中央値は平均で10.4%上昇しました。これは新型コロナウイルス流行期に住宅価格が急上昇したことによる影響です。特にフロリダ州タンパでは23.3%、インディアナポリスで19.8%、テキサス州ダラスで19%と、大幅な上昇が見られました。対照的に、ピッツバーグやフィラデルフィア、ミルウォーキーでは5〜8%の小幅な上昇にとどまりました。


住宅価格と税率の関係

固定資産税の金額は、住宅の評価額と地方自治体の税率によって決まります。パンデミック時の住宅価格高騰により評価額が上がった結果、税額も引き上げられることになりました。また、地方自治体が商業用不動産などからの税収減を補うため、住宅用不動産に対する税率を調整したことも影響しています。特に州所得税のないテキサスやフロリダでは、固定資産税が高めに設定されている傾向があります。


保険料とHOA費用も増加傾向

住宅関連のコストは税金だけではありません。保険料も上昇しています。米国財務省の報告によると、2018年から2022年の間に住宅保険料はインフレ率を8.7%上回るペースで上昇しました。さらに、自然災害リスクの高い地域に住む人々は、そうでない地域より平均82%も高い保険料を支払っているとのことです。

HOA費用(住宅管理組合費)も2024年には月額中央値が$125となり、前年の$110から上昇しています。これは集合住宅やコミュニティ型の物件に住む人にとって避けられない出費です。


「手頃だった地域」も影響を受け始めた

かつては比較的「手頃」とされていた都市部でも、住宅費用負担が深刻化しています。ハーバード大学の調査によると、2019年時点では住宅費用負担率が20%未満だったミルウォーキー、スクラントン(ペンシルベニア州)、オクラホマシティといった都市でも、2023年には全国平均の2倍以上のスピードで負担率が増加しました。


所得が低いほど厳しくなる現実

2023年には住宅費用に困窮する世帯数が65万世帯増加し、全体で2,030万世帯、つまり全オーナー世帯の23.7%に達しました。特に年収3万ドル以下の世帯では、74.2%が「住宅費用負担が重い」とされています(収入の30%以上を住宅費に費やしている状態)。


購入前に考慮すべき「隠れたコスト」

LendingTreeのチーフアナリストであるマット・シュルツ氏は、「住宅の価格や金利の高さに加えて、税金や保険料、HOA費用が購入後の大きな負担となっている」と述べています。家を買う前に、これらのランニングコストをしっかり見積もっておかないと、後になって家計を圧迫する原因となりかねません。


家を持つことの意味を見直す時代

かつては「家を持つ=経済的安定」とされていましたが、現在ではそうとは言い切れない状況が広がっています。特にハワイのような高コスト地域では、家を買うことが必ずしも得策ではないという声も聞こえるようになりました。今後も住宅関連コストの動向に注視し、自分にとって本当に適した住まい方を選ぶことがますます重要になると感じています。


【情報出典】

  • LendingTree(https://www.lendingtree.com/)
  • 米国財務省保険局(Federal Insurance Office)
  • ハーバード大学住宅研究センター(Joint Center for Housing Studies)

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