工業不動産にも変化の波
私が住むハワイでも、日常生活であまり意識しない「工業用不動産」の動向が、実は経済全体に大きな影響を与えていることを改めて感じました。2025年のスタート時点で、オアフ島の工業空室率がここ2年で最も高い水準に達したというニュースは、企業活動の変化や経済の揺らぎを反映しているように思えます。一方で、賃料や運営費は上昇しており、需給のバランスが複雑に絡み合っている印象です。
空室率が2年ぶりに上昇
2025年第1四半期、オアフ島では11万5,001平方フィートの工業スペースが空室となり、空室率は1.21%に達しました。これは過去2年間で最も高い数値で、歴史的低水準だった0.64%(2年前)と比べると明らかな上昇です。コリアーズ・ハワイによると、今後さらに約60万平方フィートの新築工業スペースが市場に供給されるため、2025年末までには空室率が1.89%にまで上昇する見通しです。
カリヒ、カラエロア、カポレイに顕著な減少
第1四半期における最大の空室拡大は、カリヒ、カラエロア工業団地、カポレイ・ビジネスパークに集中しており、これら3エリアで合計16万4,632平方フィートの占有が失われました。工業セクター全体で見ても、過去6四半期中5回は「吸収面積」(新たに使用されたスペースの増減)がマイナスで推移しています。
雇用減と売上低迷が要因
空室率上昇の背景には、工業分野における雇用減少と売上低迷があるとされます。建設業、卸売業、製造業などを含む工業セクター全体での雇用は、4年ぶりに減少に転じ、建設業だけでも1,200人の雇用が失われました。
賃料と運営費の上昇傾向
空室率が上昇する一方で、賃料と運営費も同様に増加しています。平均的な直接賃料は、2024年第1四半期の1.30ドルから、2025年には1.56ドル(1平方フィートあたり・月)へと上昇しました。これは過去6年間で年平均4.82%の上昇です。運営費も、2022年の40セントから2025年には54セントまで上昇し、3年間で35%もの増加となっています。
建設コスト上昇の背景には国際的な要因も
建築資材の価格上昇も市場に影響を与えています。アスファルト、木材、紙資材、金属製品などが6〜10.5%の値上がりを記録。カナダ、メキシコ、中国などが主要な建築資材供給国であり、特にカナダは280億ドル相当の木材や320万トンのアルミニウムをアメリカに供給しています。トランプ政権による関税政策が導入される前から、価格上昇は既に始まっていました。
開発制約の中で大家が優位に
全国的には工業用スペースの供給過剰で空室率が上昇していますが、オアフ島では土地不足により供給制約が続いています。このため、今後も工業スペースの「明確な供給不足」が続く見込みで、大家側に有利な状況が継続。テナント側には年間3〜5%の賃料上昇が想定されています。
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