私が感じる現代の人事部のジレンマ
私自身も企業の一員として働く中で、人事部門の人たちが日々どれほどのプレッシャーを感じているか、身近に感じることがあります。特にコロナ禍以降、リモートワークという新しい働き方が定着しつつある中で、それに逆行するような「出社回帰」などのトップダウン的な方針が出されると、人事の立場は本当に難しいものになりますよね。
私の周囲にも人事関係の同僚がいますが、彼らからは「本音では支持していないが会社の方針として進めなければならない」「社員からの不満を受け止める役割がつらい」といった声を耳にすることがあります。まさに板挟み状態。こうした現場のリアルな声は、今回紹介する調査結果とも強くリンクしています。
今回は、米国を中心にグローバルな人事リーダーが直面しているプレッシャーや新たな課題についてまとめた調査を紹介し、その要点を解説します。
増える「出社回帰」への圧力
Leapsomeという人事プラットフォームが行った最新調査によると、米国の人事リーダーの63%、世界全体では56%が、より厳格な「出社回帰」ポリシーの導入を企業から求められていると回答しました。
しかしその一方で、81%の人事担当者は「それが正しい施策とは思えない」と感じているとのこと。つまり、多くのHRプロフェッショナルは、経営層の方針と現場の実情との間で葛藤を抱えているのです。
組織内の文化的分断とDEIへの影響
この調査では、52%の米国人事リーダーが「社内に文化的な分断が見られる」と答えており、そのうち51%は「この分断が多様性、公平性、包括性(DEI)の取り組みに悪影響を及ぼしている」と回答しています。
これは、ただ単に出社か在宅かといった働き方の問題にとどまらず、職場全体の価値観や方向性が大きく揺れていることを示唆しています。
人事部の役割は「つなぎ役」から「推進役」へ
Leapsomeの副社長であるLuck Dookchitra氏は、「HRチームは引き裂かれているが、同時にビジネスを前進させる役割も担っている」と語っています。
彼らは人材データを使って経営層と対等に会話し、時には間違った方向に進みそうな組織にブレーキをかける役割も果たしています。その中核には「信頼」「包摂」「連携」があるとしています。
AIの台頭と人事へのさらなる期待
加えて、この文化的分断の中で、AIツールの急速な導入も進んでいます。人事部は、もはや採用や福利厚生だけを担当する部門ではなく、戦略的な意思決定をサポートし、生産性向上のカギを握る存在になってきています。
この背景には、急激なビジネス環境の変化があり、人事がその適応力を試されているのです。
まとめ:HRは「人を守る」から「ビジネスを導く」へ
このように、現代の人事部門は「社員の味方」としての役割と、「企業の方針を遂行する責任」との間で揺れ動いています。そして今、彼らはAIやデータを駆使して、企業の舵取りにも関与するようになっています。
私たち従業員にとっても、人事がどのような状況に置かれているのかを理解し、協力していく姿勢がますます重要になるでしょう。信頼と共感を土台にした職場づくりこそが、今後の企業成長のカギとなるはずです。
参照:Leapsome社調査報告「HR leaders face pressure to enforce unpopular workplace policies」
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