最近のオアフ島の小売市場を見て思うこと
私が暮らしているホノルルでは、観光や地元経済の動きにいつも注目しています。特に小売業の動向は、日々の生活や仕事にも直結してくるため、個人的にも関心が高いテーマです。最近のレポートを読む限り、オアフ島の小売市場は数字的には回復傾向にあるようですが、それでも裏には多くの課題が潜んでいることがわかります。コロナ以降、生活のスタイルも消費者の動向も大きく変化してきた今、店舗側も適応が求められているという印象です。
観光客の数や消費者の信頼感、雇用環境、そして家賃の動きなど、さまざまな要素が複雑に絡み合いながら、オアフの小売市場が今どうなっているのか。その全体像を、今回のColliers Hawaiiの市場レポートをもとに見ていきたいと思います。
第1四半期は3期連続の「好転」
2025年の第1四半期、オアフ島の小売市場は3期連続で「ポジティブな吸収(占有スペースの純増)」を記録しました。具体的には、45,493平方フィート分の新たな占有が発生し、島全体の空室率は5.44%まで低下。これは2024年第4四半期の5.71%、および同年第1四半期の5.9%からの改善を示しています。
一方で、現在建設中の小売スペースは259,170平方フィートあるものの、第1四半期には新たな供給はありませんでした。
家賃は微増、前年比では大幅上昇
小売物件のベース家賃(NNN方式)は、2024年第4四半期の月額1平方フィートあたり$4.62から$4.65に上昇しました。これは前年同時期(2023年第1四半期)と比べて7.64%の増加となります。
消費者信頼感に陰りも明るい兆し
市場の「もろさ」についてColliersは警鐘を鳴らしており、2024年11月までの小売売上高は前年同期比13.21%減の229億ドルにとどまっています。この背景には、消費者の信頼感の低下があるとされています。
とはいえ、Morning Consultの新データセット「Metropolitan Consumer Sentiment Index」によると、都市ホノルルでの消費者信頼感はコロナ前以来の高水準まで回復しているとのこと。必ずしも一方的に悪いニュースばかりではないようです。
旅行者数は減少傾向、ただし回復基調
州税務局のデータによれば、2025年2月までの航空旅客到着数は888,051人で、前年同時期の904,222人から減少。ただし、2023年や2021〜2022年と比較すると明らかに増加しています。
つまり、旅行者数の波はあるものの、コロナ禍の水準からは確実に回復してきているということです。
インフレ圧力と建設費の高騰も課題
1月の消費者物価指数(CPI)データでは、価格上昇圧力が継続していることも確認されました。これは、事業者にとってコスト増となり、家賃やサービス価格にも影響を与えています。
加えて、世界的な景気後退の可能性や建設コストの高止まり、労働市場の逼迫、賃金上昇など、複合的な課題が小売業界を取り巻いています。
小売業の勝ち筋は「ハイブリッド戦略」
Colliersのリテール部門副社長であるAndy Kazama氏は、「フィジカル(実店舗)」と「デジタル(オンライン)」の両立が、ブランドの忠誠心と売上拡大を実現する鍵だと述べています。もはや店舗を持つだけでは不十分で、ECやSNSを活用した顧客との関係構築が不可欠になっています。
柔軟な貸し出し戦略がカギに
今後の展望として、ショッピングセンター(特にパワーセンターや近隣型センター)においては、これまでアクセス困難だったエリアにもテナントのチャンスが出てきているとのこと。特に、柔軟な契約条件を提示できる家主や、再編成戦略をとる事業者は、長期的な資産価値の維持にもつながる可能性があります。
今後の注目ポイント
- 観光動向のさらなる回復
- 消費者信頼感の動き
- 家賃と建設コストのバランス
- オンラインと実店舗の融合
- 世界経済の影響と関税政策
こうした多角的な視点から、今後もハワイの小売市場は注目すべき分野となるでしょう。
参照
- Colliers Hawaii Market Report 2025 Q1
- Morning Consult Metropolitan Consumer Sentiment Index
- Hawaii Department of Taxation
- U.S. Bureau of Labor Statistics (CPI)
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