ハワイに住んでいると経済の変化がリアルに感じられる
ホノルルに暮らしていると、観光客の動きや街の雰囲気から、経済の変化を肌で感じることができます。最近、観光業界やローカルビジネス界隈で「人が減った」「売上が落ちている」という声を耳にする機会が増えてきました。そんな中、ハワイ大学経済研究機関(UHERO)が発表した最新の経済予測レポートには、やはりそうか…と納得せざるを得ない内容が書かれていました。
レポートによると、連邦政府の政策転換によって、ハワイの経済は2025年後半に「軽度の景気後退」に入る可能性が高いとのこと。観光業への依存度が高いハワイにとって、この影響は決して小さくありません。特に国際情勢や米国政府の貿易政策が、世界中の旅行者の動向やローカルビジネスに与える影響を改めて考えさせられました。
観光業への影響が顕著に
UHEROの報告書では、観光客の到着数が今後2年間で4%減少する見込みであり、2026年までに実質的な観光支出は16億ドル減少するとの予測が出されています。特に、国際観光客の動きが鈍化しており、2025年の到着数はすでに前年比で3〜6%減少しているというデータも示されています。
これは、渡航制限やビザ審査の強化、そして地政学的な不安定さが影響していると見られています。UHEROの経済学者スティーブン・ボンド=スミス氏は、「国際観光の鈍化に加えて、米国内の消費者心理や企業信頼感も低下しており、それが観光支出全体を抑制する要因になっている」と述べています。
米国本土からの観光も減少傾向
UHEROのピーター・フレキ氏は、「米本土からの観光は2022年にピークを迎えて以降、緩やかに減少している」と述べています。これまでは国際観光の回復によってこの減少を補ってきましたが、現在はその両輪が同時に鈍化している状況です。
トランプ前政権下のような関税政策が復活すれば、インフレ期待が高まり、消費活動に対する慎重姿勢が強まり、さらなる観光需要の縮小を招くと警告しています。
関税の影響は物価にも波及
輸入関税の影響については、ハワイが多くの物資を本土や海外から輸入しているため、原材料や生活必需品の価格上昇が懸念されています。ボンド=スミス氏は、「関税が国際輸入に集中しているため、他州と比べてハワイが特に影響を受けるかは不透明だが、無視できるレベルではない」と指摘しています。
観光業以外の分野にも波及
今回の景気後退予測は、観光業にとどまらず、地元企業全体の経済活動にも影響を与えています。フレキ氏によると、「経済的不確実性に直面した場合、多くの企業や家庭は消費を抑制し、慎重な行動を取るようになる。これがマクロ経済全体の停滞に繋がる」とのことです。
実際、観光に直接関係しないローカルビジネスや家庭でも、「なんとなく将来が不安で大きな買い物を控えている」という心理が広がっているのを感じます。
建設業は明るい材料も
一方で、明るい話題もあります。UHEROは建設業については比較的安定した成長を見込んでおり、連邦および州の公共投資、特にマウイ島の復興プロジェクトやパールハーバーの軍事施設改修工事が経済を支える柱となる可能性があるとしています。
UHEROのジャスティン・ティンダル氏は、「これらの大規模プロジェクトが削減される懸念は今のところ見られない」と前向きな見解を示しています。ただし、中国への関税が継続された場合、建設資材のコスト上昇が住宅再建や新規開発の障害になる恐れもあり、開発業者の間ではプロジェクトの延期を検討する動きもあるようです。
まとめ:ハワイ経済は正念場に立つ
今回のレポートを読むと、観光立国であるハワイがいかに外部の政策や国際情勢に影響を受けやすいかがよく分かります。住民の立場からすると、観光客数や物価の変動は日々の生活にも直結しており、「なんとなく不安」という空気が確実に広がっていると感じます。
ただし、建設業や公共投資といった「別の柱」も存在しており、すべてが暗い話ばかりではありません。今後、経済の不透明さが続く中でも、地元の企業や住民がどのように対応していくかが問われる時期に来ているといえそうです。
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