ハワイ旅行がまた少し高くなる理由とは
~気候変動対策として宿泊税が引き上げられる時代へ~
ハワイ、特にオアフ島ホノルルで暮らす私にとって、観光業はまさに生活の一部です。日々多くの観光客が訪れ、ホテルやバケーションレンタルに泊まり、地元経済を支えています。その一方で、気候変動によるリスクが年々増しており、島の自然や暮らしがその影響を受け始めているのも事実です。
そんな中、ハワイ州政府が2026年1月から導入を決定したのが「グリーン・フィー(Green Fee)」という新たな環境課税です。これは観光客が支払う宿泊税(TAT)に上乗せされる形で徴収され、その収益を気候変動対策に充てようという試みです。旅行者にとっては出費が増えることになりますが、地元にとっては大きな意味を持つ政策。今回はこの「グリーン・フィー」について詳しく解説します。
新課税「グリーン・フィー」の内容とは?
新たに導入される「グリーン・フィー」は、ホテルや短期バケーションレンタルに宿泊する旅行者に対し、宿泊料金に対して0.75%が上乗せされる仕組みです。これは既存のTAT(Transient Accommodations Tax:一時的な宿泊に対する課税)に追加されるもので、観光による環境負荷に対処するための新税となります。
✅ 100ドルの宿泊費に対する課税内訳(2026年1月以降想定)
項目 | 課税率 or 固定額 | 金額(USD) |
---|---|---|
宿泊費本体 | – | 100.00 |
TAT(Transient Accommodations Tax) | 10.25% | 10.25 |
グリーン・フィー(Climate Fee) | 0.75%(新規) | 0.75 |
GET(General Excise Tax) | 4.712% | 4.71 |
郡の上乗せサーチャージ(County Surcharge) | 3.0% | 3.00 |
合計(税込) | 118.71ドル |
従来よりも約75セントの追加負担となります。
クルーズ船にも初の課税対象
注目すべきは、この「グリーン・フィー」がクルーズ船にも適用される初の課税である点です。これまでクルーズ船の宿泊(船内滞在)にはTATが適用されていませんでしたが、2025年からは寄港時にも課税されることになります。
観光収入の一部がこれまで課税対象外だったことに対し、「公平な負担を実現する」という点でも画期的な政策だと言えます。
税収は年間1億ドル規模に
この新たな課税によって、年間約1億ドルの収入が見込まれていると州政府は発表しています。この資金は、以下のような目的に使われる予定です:
- 山火事の予防対策
- 海面上昇への適応政策
- 観光地の自然保護と管理
- 災害に強いインフラ整備
これらの計画は、2024年に設立された**「気候アドバイザリーチーム」**が提言した政策をベースに構想されており、今後さらに議会と協議しながら詳細が決定される予定です。
「負担は観光客に、守るのは地元の自然と暮らし」
元Alexander & BaldwinのCEOであり、気候ハワイ(Climate Hawaii)の代表を務めるChris Benjamin氏は、この政策について次のように語っています:
「このグリーン・フィーは、気候災害への備えと環境保全への歴史的な投資。守るべき“アロハの土地”を、住民だけでなく観光客とも支え合うという姿勢の表れです。」
宿泊税の歴史と背景
実はこのTATの引き上げは、今回が初めてではありません。前回は2018年に税率が9.25%から10.25%に引き上げられ、その増収分は**鉄道建設(レールプロジェクト)**の財源となっていました。
今回の改定では環境保全がテーマとなっており、観光がもたらす恩恵と負荷のバランスを取る新たな試みとして注目されています。
ハワイ旅行者が知っておくべきこと
今後ハワイへの旅行を検討している方は、次の点に注意しましょう:
- 2025年1月1日以降の宿泊予約にはグリーン・フィーが加算される
- クルーズ旅行も課税対象となる可能性があるため、料金明細の確認を
- 長期滞在(180日以上)はTAT対象外のまま
観光客として自然を楽しむと同時に、その保全の一部を支えるという意味で、この新しい課税には社会的意義が込められています。
まとめ:持続可能な観光の第一歩
今回のグリーン・フィー導入は、「観光で得た利益を環境保護に還元する」という明確な目的を持った政策です。観光によって支えられる経済と、守るべき自然。そのバランスを取るためには、このような新しい仕組みが不可欠です。
私たちローカル住民にとっても、自然は生活そのもの。旅行者の皆さんにも、この取り組みの意味を知っていただけたら嬉しく思います。そして、次にハワイを訪れる際は、ほんの少しでも「環境に優しい選択」を意識してもらえたら――それが、次の世代への最大の贈り物になるのかもしれません。
出典:
地元ニュースメディア(Hawaii News Now ほか)
ハワイ州政府公式発表(2025年6月)
Green Fee法案記録およびClimate Hawaii声明
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