思い出の味が、今度はカイムキで再び――地元に根ざした進化を感じる移転
ハワイ・オアフ島で暮らす私にとって、「The Pig and The Lady」は特別な存在です。ローカルにも観光客にも愛されるこのベトナム系ファミリーレストランが、2025年8月をもってチャイナタウン店舗を閉店し、カイムキへの移転を発表しました。
私も何度も通ったチャイナタウンの店舗は、2013年に開店して以来、ハワイの食の最前線を象徴する存在でした。そのThe Pig and The Ladyが、カイムキというより住宅地に近いエリアに移るというのは、単なる「移転」ではなく、新たな段階への進化だと感じています。
しかも、移転先のワイアラエ・アベニュー3650番地という場所は、シェフでオーナーのアンドリュー・レ氏とその家族にとって非常にパーソナルな意味を持つ場所です。1975年にベトナムから移住してきた一家が、かつて玩具店「Toys N’ Joys」を営んでいた場所のすぐ近く。この再出発は、まさに“原点回帰”であり、家族の物語が次章へとつながる瞬間でもあります。
新店舗はいつどこに?詳細情報まとめ
■ 現店舗閉店日:
2025年8月22日(火)
■ 新店舗住所:
3650 Waialae Avenue, Honolulu(Civil Beat Plaza内)
■ 新店舗オープン予定:
2025年秋
■ 新店舗の特徴:
- チャイナタウン店舗と同様の家族スタイルのベトナム料理メニュー
- 屋外席とフルバーを完備
- ランチ&ブランチ(水~日)、ディナー(火~土)
- テイクアウト対応あり
この新しいロケーションは、住宅地としても人気のあるカイムキ地区。近年、地元発の飲食店が集まり、「ローカルグルメの宝庫」として注目を集めている地域です。そこにPig and The Ladyが加わることで、さらに魅力が増すのは間違いありません。
旧店舗も完全閉店ではない?将来の再活用に期待
今回の発表で注目すべきなのは、チャイナタウン店舗が「完全閉店」ではないという点です。
The Pig and The Ladyによれば、今後はケータリングサービスや新たなブランドコンセプトの拠点として再活用する予定があるとのこと。これまで築いてきたチャイナタウンとのつながりを保ちつつ、別の形でその空間を活かす計画のようです。
一度築かれた地元との信頼関係を絶やすことなく、新たな挑戦をし続ける姿勢は、まさに地域密着型レストランのあるべき姿だと感じます。
ベトナム料理×ハワイの融合が評価され続けた10年
Pig and The Ladyの始まりは、なんとローカルのファーマーズマーケット。その後、2013年にチャイナタウンに実店舗を構え、斬新なベトナム料理とハワイの食材の融合で一躍有名店となりました。
中でも「フォー・フレンチディップ」や「レモングラス・ブロス・ヌードル」は、観光客だけでなく地元の人々にも愛される定番メニュー。さらに2019年には東京・恵比寿にも店舗をオープンし、ハワイ発のグローバルブランドへと進化を遂げています。
約50万ドルの改装費をかける本気度
公的な建築許可記録によれば、ワイアラエ通りの新店舗は約50万ドルの改装工事が予定されているとのこと。これは単なる移転ではなく、「よりよい空間を作る」という本気の意思表示です。
フルバーの設置や屋外席の整備など、レストランとしての機能性だけでなく、地域のコミュニティ空間としての役割も視野に入れた設計になることが期待されます。
カイムキの食シーンに新たな一石を投じる存在に
カイムキは、最近では「Mud Hen Water」や「Koko Head Cafe」など人気店が集まるグルメエリアとして注目を浴びています。そんな中で、Pig and The Ladyのような実績ある店舗が加わることは、地域全体のレベルをさらに引き上げることにつながります。
また、アンドリュー・レ氏のように、ハワイにルーツを持つ移民2世が中心となって食文化を再構築する動きは、今後ますます重要になると感じています。移民の家族の物語が、ハワイの未来の食を形づくっていく――その現場を目の当たりにできるのは、とても幸運なことです。
まとめ:別れではなく、新たな出発の物語
チャイナタウン店の閉店は、少し寂しさを感じさせる出来事ですが、それは決して「終わり」ではありません。むしろ、The Pig and The Ladyの歩みが新しい地域・新しい形で続いていくことを示す力強いメッセージです。
カイムキというローカル色の強い街で、どんな物語が紡がれていくのか。私は一人の地元住民として、そして一人のファンとして、この新しいページの始まりを心から楽しみにしています。
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