【アメリカ】エントリーレベル職がAIで消える?Z世代に迫る雇用の危機

私たちの世代が直面する“入り口の崩壊”という現実

ハワイ・ホノルルでIT系の仕事に就いている私にとって、AIの進化は常に身近な話題です。ChatGPTやClaudeのような生成AIが急速に広まり、実際の業務にもその影響を感じる機会が増えてきました。しかし、先日読んだAnthropic社のCEOダリオ・アモダイ氏の発言には、私自身も少なからず衝撃を受けました。

彼は、今後5年以内にAIによって全エントリーレベル職の半数が消滅する可能性があると警鐘を鳴らしているのです。それが現実になるなら、私たちの後に続くZ世代の若者たちにとって、社会に出る「第一歩」が奪われてしまうのではないか——そんな危機感を覚えました。

エントリーレベル職というのは、単に“最初の仕事”というだけではありません。職業スキルを学び、成長していくための土台です。ここが崩れてしまうと、キャリア形成の流れそのものが変わってしまうかもしれません。私たちのようなミレニアル世代が経験してきたキャリアの「当たり前」が、次の世代では通用しなくなる可能性もあるのです。





CEOが語る「AIによるホワイトカラーの入口崩壊」

Anthropic社のCEOであるダリオ・アモダイ氏は、AIの進化によって金融、コンサル、テック業界のエントリーレベル職が消滅すると予測しています。

「2年前は賢い高校生レベルだったAIが、いまや賢い大学生レベルに到達し、それ以上に進化しつつある」
(アモダイ氏/Fox Newsより)



実際、MetaやGoogleなどAIを積極的に活用する企業では、2023年以降のインターンシップ募集が約44%も減少。これは単なる一時的な採用縮小ではなく、構造的な変化の兆しと見る専門家もいます。


「最初の一歩」が失われる構造的変化

LinkedInのAneesh Raman氏は、現在起きている変化を1970〜80年代の製造業における自動化の波に例えています。つまり今回は、オフィスワーカーがその対象となっているのです。

TalentNeuronの調査では、2024年4月と比べて2025年4月のインターン求人は13%減少。特にソフトウェア、広報、法務、品質管理といった分野での落ち込みが顕著です。エントリーレベル職全体の求人は前年と比べて1%減と小幅ですが、これには分野ごとの差が大きく影響しています。

  • 減少:事務職、会計、ソフトウェア開発
  • 増加:医療、セールス、対人サービス系

つまり、AIに置き換えられにくい「人間らしさ」が求められる職業が生き残っているという傾向です。


AIだけが原因ではない、という冷静な見方も

TalentNeuronのエリカ・リー氏は、「AIだけが原因ではない」と述べています。2020〜2022年にかけて起きたパンデミック特需による採用ブームの反動、インフレ、地政学的リスク(関税など)も関係しているとのことです。

それでもAIの影響が無視できないのは確かで、2022年末のChatGPTの登場以降、執筆やプログラミングといった自動化されやすい仕事のギグワーク投稿が21%減少したというデータも、ハーバード・ビジネス・レビューから発表されています。


企業側の葛藤:「AIに任せるべきか否か」

すべての企業がAIによる人員削減に走っているわけではありません。プレゼンテーションソフト「Beautiful.ai」の調査では、マネージャーの54%が「AIで社員を置き換えたくない」と回答。これは前年の39%から大きく増えています。

また、**人事責任者の52%が「近い将来AIで人員削減を行う予定はない」**とも述べています。つまり企業側も、AI導入に慎重になり始めている段階にあるのです。


求められるのは「新しい入り口」の設計

TalentNeuronのエリカ・リー氏は、「エントリーレベルの職をなくすのではなく、再設計すべき」と提案しています。

今後のキャリア形成においては、単に“下積み”ではなく、AIと共存しながらも人間ならではの価値を磨ける新しい形の職務設計が必要になるでしょう。企業には、将来の人材パイプラインを意識した長期的視点が求められています。


まとめ:Z世代と企業、どちらにも課題とチャンスがある

AIによって変わりゆくエントリーレベル職の現実。Z世代にとっては、キャリアのスタート地点から大きな壁に直面する厳しい時代かもしれません。

しかし同時に、それは新しい働き方をデザインできる時代でもあるとも言えます。企業側も、従来の“序列型キャリア”から脱却し、人間らしさとテクノロジーの融合による職務設計を模索する時です。

私たちが築いてきたキャリアパスは、もしかすると次世代には通用しないかもしれません。それでも「人としての価値」が見直される時代が来ているのなら、それは希望でもあるのです。




出典

  • Axios / Fox News:Dario Amodei(Anthropic CEO)インタビュー
  • LinkedIn News/New York Times:Aneesh Raman
  • TalentNeuron:2025年就職市場調査レポート
  • IMF/Harvard Business Review:AIと雇用に関する研究

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