ジッピーズが示す「テクノロジーで優しさを広げる」飲食業の未来像
私がホノルルで暮らしていて、日常的に立ち寄るローカルレストランのひとつがZippy’s(ジッピーズ)です。朝食にロコモコ、夜食にチリライス。地元に根ざしたこのレストランチェーンが、近年急速に進めているテクノロジー改革に、個人的にも興味を持っていました。
そのジッピーズが、ついにオンライン注文、アプリ、ウェブサイトの大幅なアップグレードを実施。店内での体験からスマホでのオーダーまで、あらゆる場面での利便性が向上しています。そして、それは単に「便利になった」というだけでなく、従業員の働きやすさ、そして地域経済の活性化にまで波及する施策として注目すべきです。
今回のリニューアルにより、私たち利用者は過去の注文履歴からワンタップで再注文できるようになり、注文の進捗状況もリアルタイムで確認可能に。注文の取り違いやレジ前での混雑といった、これまでありがちなストレスが解消されつつあります。
一方、働くスタッフ側にとっても、フードロッカーの導入などによりオペレーションが効率化。顧客対応の質を高める余裕が生まれているという点にも注目です。
さらに驚いたのが、Zippy’sが今回のシステム開発にあたって地元のIT人材育成団体と連携し、インターン育成にも貢献しているということ。これはまさに「地域とともに成長する企業」の理想的な姿です。
顧客体験を劇的に改善したデジタルリニューアル
Zippy’sの親会社であるFCH Enterprisesは、約1年半の開発期間を経て、オンライン注文システム、ウェブサイト、公式アプリの全面刷新を行いました。
同社のテクノロジー担当副社長であるアンソニー・メヒア氏は、「これまでもツールはあったが、時代遅れになっていた」と語ります。
新システムでは以下のような機能強化が行われました:
- 過去注文の再オーダー機能
- 注文進捗のリアルタイム追跡
- リワードプログラムとの連携
- UI(ユーザーインターフェース)の刷新
これらにより、ユーザーはよりスムーズに、ストレスなく注文を完了できるようになっています。
外部委託から自社開発体制へ
かつてZippy’sは複数の外部ベンダーのツールを「継ぎ接ぎ」して利用していました。
マーケティング担当副社長のケビン・イム氏によると、「アップデートするにも時間と調整が必要で、フレキシブルに対応できなかった」とのこと。
そこで同社は、今回のアップグレードに合わせて社内に開発チームを新設。現在はウェブ開発者、アプリ開発者、プロジェクトマネージャーの3名を採用し、今後半年間で外部代理店から完全に自社運用に切り替える方針です。
フードロッカーが従業員と顧客の双方にメリット
注文完了後の受け取りも、フードロッカー方式の導入により効率化されました。
顧客は列に並ぶことなく、指定されたロッカーから商品をピックアップでき、スタッフは配膳に追われることなく調理やチェックに集中できます。
この仕組みは、労働者の役割を奪うものではなく、「サポート」するためのテクノロジーであると、イム氏は強調します。事実、システム導入後も従業員数は減らされるどころか、新たなポジションが生まれています。
地元IT団体との連携で地域貢献も
さらにZippy’sは、ハワイのテック人材育成団体「Piiku Co.」と連携し、今後の新機能開発にも地元インターンを積極的に活用する方針です。
開発予定の新機能例としては:
- 誕生日ケーキなどのカスタムケーキ事前注文
- ホリデーミールの予約購入
同社は、「地元で育った牛肉を使うように、地元で育ったエンジニアの力を使いたい」と述べ、“地産地消型”テクノロジー活用のモデルケースとなっています。
すでに始まった売上増の兆し
今回のアップグレードの成果は、すでに売上という数字にも反映され始めています。
アプリ経由で翌日の朝食を事前予約できる機能が導入されてから、朝食メニューの売上が上昇しているとのこと。
副社長メヒア氏は、「利便性が増せば、注文の頻度や客単価の上昇も期待できる」と述べ、デジタル投資による収益性の向上にも自信を見せています。
今後も続く進化:セルフオーダー端末の導入へ
今後の展開として、Zippy’sでは店内でのセルフオーダー端末(キオスク)の設置も計画中。
また、グループ会社であるNapoleon’s BakeryやA Catered Experienceのデジタル基盤も同様にアップデートしていく方針です。
メヒア氏は、「フィードバックを受けて迅速に修正を行える体制になった今、継続的に改善を重ねていきたい」と語り、今後も進化し続けるZippy’sの姿勢を強調しています。
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