高級住宅市場が活況:オアフ島の不動産市場に見える二極化

全体市場の減速とは対照的に、オアフ島の高級住宅は堅調な伸び

ハワイ・オアフ島で暮らしている私にとって、不動産市場の動向は生活に直結する大きな関心事です。近年、金利の上昇やインフレ、建築コストの増大など、住宅市場にとって逆風となるニュースが続いていますが、そんな中でも注目すべき現象が起きています。それは、**オアフ島における「高級住宅市場の好調」**です。

2025年5月時点で、オアフ島全体の住宅販売は前年同期比で一戸建てが5.6%減、コンドミニアムが21.8%減と大きく落ち込んでいます(ホノルル不動産協会調べ)。しかし一方で、200万ドル以上の高級物件の販売件数は前年より増加しており、この二極化傾向が鮮明になっています。

私自身、ホノルル市内でも特に高級住宅街として知られるカハラやハワイロアリッジ周辺を散歩することが多いのですが、そのエリアでは空き家が目立たず、むしろリノベーション中の住宅が増えている印象を受けます。これは、高級住宅市場が引き続き活発であることの一つの証左とも言えるのではないでしょうか。

この記事では、Coldwell Banker Realtyによる最新レポートを基に、オアフ島の高級不動産市場の現状とその背景を解説し、一般市場とのギャップがなぜ生まれているのかを掘り下げていきます。





高級住宅販売は前年比3%増

2025年5月の高級住宅(販売価格が200万ドル以上)の販売件数は37件で、前年同月(36件)から3%増となりました。内訳は以下の通りです:

  • 一戸建て:32件(前年28件から14%増
  • コンドミニアム:5件(前年8件から38%減

全体ではコンドミニアムが減少していますが、年初からの累計(年初来ベース)ではコンドミニアム販売は31%増と、長期的な関心の高さが示されています。


価格帯別の動向:中間〜高価格帯に集中

価格帯別の動きを見ると、2025年5月の高級物件の中央値は307万ドルで、前年(278万ドル)より11%上昇しました。この上昇を牽引したのは以下の価格帯です:

  • 300万〜399万ドル:販売件数11%増
  • 400万〜599万ドル:販売件数100%増

一方で、

  • 200万〜299万ドル:販売件数19%減(一戸建ては12%減)

このことから、購入層がより高価格帯にシフトしていることがわかります。特に400万ドル以上の物件に対する需要の高まりは、富裕層の資産運用戦略の一環として不動産を選んでいる現れと考えられます。


超高級物件の動向と注目の取引

今回報告された最上級価格帯の取引としては、以下の2件が際立っています:

  • Hokua(カカアコ):ペントハウスユニット(3ベッド・3.5バス・4,146平方フィート)が1,300万ドルで販売
  • Waikiki Shore(ワイキキ):ビーチフロントコンド(2ベッド・2バス・1,158平方フィート)が600万〜999万ドル帯で販売

超高級物件(1,000万ドル以上)の販売が少ない中、立地や眺望など希少性の高い物件は確実に高値で取引されています。


地域別販売動向:伝統の高級住宅街に需要集中

Coldwell Banker Realtyによれば、2025年5月に最も多くの高級住宅が売れた地域は以下の通りです:

  1. カハラ(Kahala):5件
  2. ハワイロアリッジ(Hawaii Loa Ridge):4件
  3. カカアコ(Kakaako):3件

このラインアップを見ると、土地の希少性や生活環境の良さが高く評価されているエリアに集中していることがわかります。私もカハラの海沿いを歩くたびに、手入れの行き届いた邸宅やリゾートのような静けさに魅了されます。住環境の質そのものが価格に反映されているのです。


なぜ高級市場だけが堅調なのか?

このような二極化現象の背景には、いくつかの要因が考えられます:

1. 富裕層の資産防衛ニーズ

金利上昇や株式市場の不安定さにより、実物資産(特に不動産)へのシフトが強まっています。高級不動産は値崩れしにくく、長期的な保有資産として好まれます。

2. 海外・本土からの需要

パンデミック後のリモートワーク普及やライフスタイルの見直しにより、本土の富裕層がハワイに第二の拠点を求める動きが続いています。

3. 供給制限

地理的制約や規制によって、新規供給が限られるハワイでは、既存の希少な高級物件が資産価値を維持しやすいという特性があります。


今後の展望と戦略

Coldwell Bankerのラグジュアリーディレクター、パティ・ナカガワ氏は「高級不動産は引き続き資産形成戦略の柱となる」と述べています。短期的には販売件数の変動があっても、中長期的には安定成長が続くと見られています。

買い手にとっては、景気に関係なく価値のある立地や物件を見極める目がより重要になります。また、売り手にとっては、マーケティングとプレゼンテーションの質が価格に大きく影響する時代になっています。

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