「あの懐かしの50年代アメリカ」が消える寂しさ — ローカルに愛された名店の終幕
ホノルル・ワイキキの西側にある「ロックアイランド・カフェ(Rock Island Cafe)」が、26年の歴史に幕を閉じるというニュースを聞いたとき、胸に少し寂しさが込み上げてきました。観光地ワイキキの中でも、この店はどこか懐かしく、ローカルの人々にとっても“思い出の味”のような存在だったのです。
私自身、過去に数回訪れたことがあります。1950年代をテーマにしたアメリカンダイナー風の店内には、エルヴィスやマリリン・モンローのポスター、赤と白のチェッカー柄のカウンター、そして昔ながらのミルクシェイク。どこかタイムスリップしたような雰囲気に、初めて訪れた観光客も思わず笑顔になる空間でした。
そんなロックアイランド・カフェが、2025年9月21日をもって閉店しました。
長年、家族経営でワイキキの一角を支えてきた同店のオーナー、マイケル・ゲルフォ氏は「この街にはチェーン店が多いけれど、地域の味を作るのはやっぱり家族経営の店」と語っています。その言葉が、ハワイのローカルビジネスの現実と温かさの両方を物語っているように思います。
1969年に始まった家族ビジネスの挑戦
ロックアイランド・カフェの原点は、実は1969年にスタートした観光土産の小売業にあります。ゲルフォ家が運営していたこのビジネスは、ワード・ウェアハウスやキングス・ビレッジ、カラカウア通りなどに店舗を構え、観光客向けのギフトやコレクションアイテムを販売していました。
やがて、マイケル氏がカリフォルニアから帰郷し、レストラン業界での経験を持ち帰ったことで、「小売×飲食」というハイブリッド型のカフェへと進化。ミルクシェイクや軽食を提供しながら、50年代アメリカの雰囲気を再現したテーマカフェとして人気を集めました。
2018年に拠点だったキングス・ビレッジが再開発のため閉鎖された際、同店は現在の**カラカウア・アベニュー1911番地(Kalakauan Condominiums 1階)**に移転。地元住民と観光客が行き交うワイキキ入口で、再び居心地の良い空間を提供してきました。
「新しい章」へ—Hi.Shackが跡地に新レストランを開業
ロックアイランド・カフェの閉店後、跡地には新しい地元企業「Hi.Shack: A Taste of Aloha」が出店します。オーナーのエドガルド&グロリア・エスカル夫妻は、これまでWicked Maine Lobster(ロイヤル・ハワイアン・センター)やワイキキ・ビーチサイド・ホステル内テイクアウト店を運営しており、人気のロブスターロールやローカルメニューを提供してきました。
新店舗では、ロブスターロール、アメリカン料理、フィリピン料理を中心に、朝食からディナーまで幅広いメニューを展開予定とのこと。価格も手頃に設定し、ローカル住民向けのカマアイナ割引を導入する方針です。
「私たちは観光客だけを対象にしていません。コミュニティの一員として、地元の人たちに愛されるお店を作りたい」とエドガルド氏は話しています。
ローカル・ビジネスの挑戦と次の世代へ
ロックアイランド・カフェの閉店は、単なる“1店舗の終わり”ではありません。ハワイの飲食業界における「家族経営」の象徴が一つ幕を下ろすという意味があります。大手チェーンが次々と進出するワイキキで、個人店が生き残るのは簡単ではありません。
それでも、ゲルフォ氏が語った「新しい章の始まり」という言葉には希望があります。ロックアイランドのスピリットは、形を変えて次の世代へと受け継がれていく。もしかすると、将来的にポップアップイベントやオンラインショップという形で、再び“ロックアイランド”が復活する日が来るかもしれません。
「味」と「思い出」が交差する場所
ワイキキは常に変化し続ける街です。新しいホテルが建ち、古い店が姿を消していく中で、残るのは「その時代にしか味わえなかった思い出」です。ロックアイランド・カフェも、まさにそんな場所でした。
ミルクシェイクを片手に笑い合った家族、初めて訪れた観光客、地元の常連たち——そのすべてが、ワイキキの歴史の一部として残り続けるでしょう。
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