ハワイ観光局理事が全員辞任、新体制へ再出発

ついにHTA理事全員が辞任――これは観光業再建のチャンスか

ハワイの観光をめぐる情勢が、また一つ大きく動きました。ホノルルに住んでいる私としても、このニュースには少なからず衝撃を受けました。

2025年7月1日、ハワイ観光局(Hawaii Tourism Authority=HTA)の全理事が辞任したことが正式に発表されました。これは、グリーン州知事が求めた「リーダーシップの全面的なリセット」に応じたもので、HTAが新たな助言機関として再構築される過程での重要な一歩です。

HTAはここ数カ月、運営上の混乱や会計の不備、そして内部の対立などが問題視され、議会や市民から厳しい視線が向けられてきました。こうした状況に対し、グリーン知事は構造的な改革を推し進めるため、すべての理事に辞任を要請していたのです。

私自身、観光業に支えられてきたハワイの社会に住む者として、「変革」は避けられないと感じています。いまこそ、観光のあり方を問い直す好機なのではないでしょうか。





全理事が辞任、知事の要請に全面的に応じる形に

7月1日現在、全11名の理事が自主的に辞任したことが、ハワイ州知事室から公式に確認されました。

最初に辞意を示したのはデイビッド・アラカワ氏。知事の要請を受けた直後に即座に辞任しています。他のメンバーも数日以内に次々と辞任し、7月1日までに全員が退任しました。HTA理事長だったトッド・アポ氏も6月30日(月)に辞任。リサ・ポールソン氏も翌日に辞任を表明しています。

元理事のジェームズ・マッカリー氏は「理事会内部の分裂は深刻で、全員が一度退くのが最善」と語っています。実際、内部では意見の対立が続き、組織としての一体感が損なわれていたようです。


今後は新理事による体制構築へ

今後のHTA理事会は、新たに任命されるメンバーによって構成されることになります。これは、2025年6月に成立した**上院法案第1571号(Senate Bill 1571)**に基づくもので、HTAが政策決定機関ではなく「助言機関」として再出発する中核を担う人々です。

この新理事会の初仕事として、最も重要なミッションの一つが新CEOの選定と契約条件の策定です。

新法では、「理事会がCEOの任期や職務内容、報酬条件を定める権限を持つ」と明記されています。


CEO報酬パッケージと州知事の意向

興味深いのは、新CEOの報酬に関する議論です。マッカリー氏によると、HTAでは当初、30万ドルの年俸上限でパッケージが提案されていましたが、グリーン知事は副知事の年収(約18万8,400ドル)を上限とするよう要望しているとのことです。

福利厚生を加味すれば、最終的な報酬総額は30万ドル前後になる可能性もあり、理事会はこの要望を踏まえて報酬設計を行うことになります。

観光業界で求められる人材は経験豊富で広範なスキルが必要なため、報酬のあり方については今後も議論が続くことになりそうです。


「再出発」は観光業再構築のカギとなるか

HTA理事の一斉辞任は、単なる人事のリセットではありません。これは、ハワイが長年にわたり依存してきた観光の構造を見直すための、歴史的な転機になる可能性を秘めています。

先述の「Governance with Aloha」レポートでも指摘されている通り、今後の観光行政は「デスティネーション・マネジメント」、すなわち地域との共生を重視した運営が求められています。

地域社会との対話、住民の生活を尊重した観光政策、環境負荷を抑えた観光開発――こうした価値観が、これからのHTAに問われるのではないでしょうか。


まとめ:ハワイ観光に必要なのは「透明性」と「共創」

観光業界は、パンデミック後の回復とともに、今再び試練を迎えています。HTA理事会の総辞任という劇的な変化は、混乱のようにも見えますが、同時に新たなスタート地点でもあります。

私たち住民の声をどれだけ政策に反映できるか。観光客にとっても、地域にとっても、より良い未来をつくるにはどうすればいいか。

新たなHTA理事会とリーダーには、透明性と説明責任、そして地域との「共創」を軸とした運営を期待したいと思います。


出典:

  • Pacific Business News(2025年7月2日)
  • Office of the Governor, Hawaii
  • Governance with Aloha Report(2024年、Better Destinations LLC)

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