成長のチャンス?それとも慎重な見極めが必要な変化?
アメリカで進行中の税制改革の動きに、中堅企業が揺れています。私自身、現地ハワイで働く一人として「この税制改正が私たちの日常やビジネスにどんな影響を与えるのか?」という視点でニュースを注視しています。
今回米国下院で可決された税制法案は、R&D(研究開発)税控除や設備投資に対するボーナス減価償却といった企業向けの減税措置を多く含んでおり、特に製造業やソフトウェア業界などの**中堅企業(Middle-Market)**には大きな追い風となる可能性があります。
一方で、再生可能エネルギーへの税控除削減や医療制度への影響、貿易関税の見直しなど、業種によっては慎重な対応が求められる要素も多く、今後の展開次第では経営判断に大きな影響を及ぼすことが予想されます。
中堅企業にとっての主なメリット
即時控除可能な研究開発費
これまで企業が研究開発(R&D)にかけた費用は5年かけて控除するルールでしたが、新法案では2024年12月31日以降、米国内でのR&D費用は即時控除できるようになります。
さらに、年間売上が3,100万ドル未満の企業については、2021年末まで遡って適用可能という優遇措置もあり、特にスタートアップや技術開発型の中堅企業にとっては資金繰りにおいて大きな恩恵となります。
ボーナス減価償却で設備投資を促進
法案には、機械や設備などの資本投資に対する100%のボーナス減価償却制度が含まれています。これにより、企業は設備購入時に即座に全額を経費計上でき、キャッシュフローの改善と成長への再投資が促されると期待されています。
組織形態による税制上のメリット
パススルー企業への優遇拡大
ポートフォリオ・ポイント・パートナーズ社のマシュー・フリードマン氏によれば、パススルー構造(SコーポレーションやLLCなど)を採用している企業は、今後さらなる所得控除の拡充により、税制上の優位性が高まるとのことです。
現時点でCコーポレーションとして法人税を納めている企業も、パススルー構造への移行を検討する価値が出てくる可能性があります。
相続税免除額の引き上げ
家族経営の中堅企業にとって注目なのが、相続税の免除額が個人で1,400万ドルから1,500万ドルへ引き上げられる点です。この措置が恒久化されれば、企業継承時の負担が大幅に軽減されます。
一方で懸念されるリスク
再生可能エネルギー支援の後退
一部の再生可能エネルギー業界では、今回の税制法案により電気自動車購入に対する個人向け税控除や企業向けの再生エネルギー投資控除が大幅に削減される見通しです。
これは、再生エネルギー分野に依存する中堅建設会社や設備メーカーにとっては市場縮小の可能性を意味し、将来的な投資判断に影響を与える恐れがあります。
関税見直しによる原材料コストの上昇
国際貿易に関しては、「de minimus(少額免税)」制度の廃止や新たな輸入関税の導入によって、鉄鋼やアルミニウムといった建設資材の価格が上昇する可能性があります。
ヒスパニック建設協議会のCEOであるジョージ・カリーヨ氏も、「材料費が上昇すれば、利益率の低い中堅企業の財務を圧迫し、プロジェクトの価格設定にも影響する」と指摘しています。
中堅企業に求められるのは「戦略的対応」
今回の税制改革は、企業規模や業種に応じたメリットとデメリットが混在する構成となっています。特に中堅企業にとっては、税制の恩恵を最大限活用するための経営戦略の見直しが必要です。
- R&Dや設備投資への優遇をどう活かすか?
- 組織形態は現在のままで最適か?
- 環境投資の見直しや輸入コストへの対策は?
今後、上院での審議と修正を経て最終的な内容が確定するとはいえ、税制改革は「待ち」の姿勢ではなく、先読みと準備」が重要だと感じます。自社の将来にとって有利に働くよう、継続的な情報収集と専門家の活用が鍵となるでしょう。
コメント