観光立県ハワイにまた新たな風―ヒルトンの進出から感じた期待と懸念
私が暮らすホノルルでは、観光業が地域経済の中核を担っています。街を歩けば、世界中から訪れる観光客の姿を毎日目にします。そんな観光大国ハワイにおいて、カウアイ島で進められている新しいヒルトンブランドホテル「Hale Malana(ハレ・マラナ)」の建設プロジェクトが、新たな一歩を踏み出したというニュースを知り、個人的にも非常に興味を持ちました。
このプロジェクトの規模は1億5,000万ドル(約230億円)。そのうちの多くがEB-5投資家ビザプログラムを通じて調達されたという点も、近年の国際資本の流れを感じさせる話題です。外国人投資家がアメリカでの永住権を得ることを目的に資金を提供し、その資金で地域に雇用と経済波及効果をもたらす。仕組みとしては非常に理にかなっており、ハワイのような観光経済が中心の地域においては、理想的な資金調達モデルといえるでしょう。
ただ、地元に住んでいる身としては、単に高級ホテルが増えることに手放しで喜べるわけではありません。観光収益が地元にきちんと循環するのか、土地の開発が自然環境に与える影響、インフラや交通への影響、さらには地元住民の暮らしにどう影響するかといった点についても慎重に見守っていく必要があります。
とはいえ、観光業が活性化すること自体は悪いことではありません。特にカウアイ島のように、他の島に比べて開発が控えめで、自然と文化が色濃く残るエリアに新たな観光資源が誕生することは、持続的な経済発展にもつながり得ます。今回のように地域雇用を1,800人以上創出する見込みがあるというのは、非常に前向きな要素だと感じています。
それでは、今回のプロジェクトの詳細について以下で整理してご紹介します。
カウアイ島に初の「Curio Collection by Hilton」
新設されるホテル「Hale Malana」は、**ヒルトンの高級ブランド「Curio Collection」としてハワイで初めて展開されます。場所はリフエのKalapaki Circle(カラパキ・サークル)**で、周辺には既に観光客が多く訪れるカラパキビーチやホクアラゴルフコースがあるエリアです。
ホテルの概要と施設内容
- 総部屋数:210室(スタンダード187室、スイート23室)
- スタンダードルーム面積:平均約36㎡(387sqft)
- スイートルーム面積:平均約72㎡(778sqft)
- 付帯施設:レストラン、プール、屋内会議室(186㎡)、屋外イベント会場(2,323㎡)、フィットネスセンター、ゴルフ用プロショップ
資金調達とEB-5ビザの活用
本プロジェクトの特徴のひとつが、外国人投資家からのEB-5ビザを活用した資金調達です。
- 総資金調達額:1億5,000万ドル
- うち、EB-5投資家(外国人)による資金:1億ドル
- EB-5投資家数:125名(グリーンカード取得を目的)
- プロジェクトを通じて、米国永住権を得るための条件を満たす形で投資
この制度は地域に10人以上の雇用を創出するプロジェクトに対して外国人投資を認めるというもの。今回、移民局から最初の投資家が永住権申請を許可されたとのことで、今後の他の投資家の申請にも弾みがつくと見られています。
建設と完成時期
- 開発会社:Silverwest Hotels
- 建築会社:Nordic PCL Construction Inc.
- 設計事務所:AHL
- 着工予定:2025年秋
- 完成予定:2026年第3四半期
建設が完了すれば、観光客だけでなく、ビジネス用途やイベント利用にも対応する施設として期待が高まります。
1,800人以上の雇用創出が見込まれる
本プロジェクトの影響として、1,830人以上の直接・間接的な雇用が見込まれています。これにはホテルスタッフのほか、建設関連、イベント運営、清掃、施設管理、ツアーガイドなど多岐に渡る職種が含まれます。
カウアイ島の地元経済にとって、こうした持続的な雇用の場が増えることは非常に大きな意味を持ちます。
地元への配慮も今後の評価の鍵
観光施設の開発は地域経済を潤す一方で、自然や地元コミュニティに与える影響も無視できません。開発後も地元への利益還元や環境保全との両立がなされるかどうかが、長期的に評価されるポイントとなるでしょう。
特にカウアイ島のように自然が観光資源である地域では、「量」より「質」が問われる観光戦略が必要とされます。
まとめ:観光と地域が共に育つプロジェクトへ
今回のヒルトンの新ホテル開発は、ハワイにとって新たな観光資源となり得るプロジェクトです。国際投資による資金調達、地域雇用の創出、そして新たなブランド展開という複数の側面から注目されています。
私自身、こうした開発を「観光収益を地元に還元する仕組み」として育てていけるのかという視点で見守っています。これから建設が始まり、完成までまだ時間はありますが、地元との対話や配慮がプロジェクト成功の鍵を握ることは間違いありません。
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