ワイキキの「ME BBQ」商標トラブルが映すハワイ観光経済の影
私がホノルルに住んでいてよく感じるのは、観光地としてのワイキキでは小さなレストランであっても名前の力が非常に大きいということです。観光客は情報を事前に調べ、GoogleマップやSNSのレビューを頼りにお店を決めることが多いので、店名やブランドがどれだけ信頼を持つかが死活問題になります。今回ニュースになっているワイキキの韓国料理店「ME BBQ」をめぐる商標トラブルは、そのことを象徴的に示しています。
私は個人的に、ワイキキで飲食店がひしめく中で生き残るのは容易ではないと思っています。観光客にとっては「名前」で検索してヒットするかどうかが最初の分かれ道ですし、現地に住む私の目から見ても、人気のある店は必ずと言っていいほど独自のブランド力を築いています。そのブランド力を守るための「商標」がいかに重要かを、今回のケースは分かりやすく示しています。
特にハワイでは、日本からの観光客にとって口コミやガイドブックに載っている「おなじみの名前」が安心材料になります。たとえば長年親しまれてきた「ME BBQ」という名前が突然別の店で使われれば、多くの観光客が混乱し、信頼を失うことになるでしょう。私自身も長くハワイに暮らす中で、観光客から「この店って前に行ったのと同じ?」と尋ねられることがよくあります。ブランドと場所が一致していない場合、観光地における体験の質まで揺らいでしまうのです。
商標トラブルの背景
ワイキキにある韓国料理店「ME BBQ」は、1992年にキム一家がオープンし、特に日本人観光客の間で人気を集めてきました。しかし、2023年に店舗のリース契約を失い、一時的に閉店。その間に別の事業者が元の場所を借りて「ME-BAR-B-QUE」という類似名称で営業を開始しました。
問題を複雑にしているのは、どちらの事業者もハワイ州商業局(DCCA)に商標を登録済みであるという点です。キム一家は2014年から「ME BBQ」を登録しており、更新もしてきました。一方、新たに入った事業者も「ME-BAR-B-QUE」を登録し、現在は両者が有効な権利を主張しています。
ハワイ州法では、商標を1年間使用しなければ取り消しの対象になる可能性があります。そのため、「閉店中の2年間は実質的に商標を放棄していたのではないか」という解釈が争点になっています。
観光とブランド保護の関係
ハワイの経済は観光に大きく依存しており、レストラン業界では「名前」が集客力を左右します。特に日本からの観光客は旅行会社やガイドブックで紹介された店舗名を信頼する傾向が強く、似たような名前が存在すると大きな混乱を招きます。
この問題は単なる一飲食店の争いにとどまらず、観光ビジネス全体に関わる重要なテーマを浮き彫りにしています。つまり、ブランドの一貫性と保護がいかに重要かという点です。
州登録と連邦登録の違い
専門家によれば、州の商標登録はあくまでハワイ州内に限定されるもので、保護の範囲が狭いのが現状です。一方、連邦レベルでの商標登録は「消費者の混同を招く可能性」を基準としており、保護の力が格段に強いとされています。今回の「ME BBQ」問題では、連邦商標を取得していればもっと明確な解決ができた可能性もあります。
ハワイでは観光産業に関わる中小規模の飲食店が多く、ブランド保護にまで十分なリソースを割けないケースがほとんどです。しかし、このようなトラブルが起きた場合、弁護士費用や顧客離れといったコストは非常に大きくなります。私が見ていても「なぜ早めに連邦商標を取っておかなかったのか」と思うことがよくあります。
今後の行方と私の視点
今回の争いは、DCCAが「キム一家が本当に営業再開の意思を持っていたのか」をどう判断するかにかかっています。もし「放棄」と見なされれば、新たな事業者の登録が優先される可能性も否定できません。
私の意見としては、地域の観光経済を考えれば、長年ブランドを築いてきたキム一家の名前が保護されることが望ましいと思います。観光客にとっても「いつものME BBQ」がそのまま存続する方が安心できるからです。
一方で、閉店期間に別の事業者が投資をして営業を始めたことも事実であり、全くの無効とは言えません。この問題が示すのは、観光地ハワイにおいては「商標管理とブランド戦略」が生き残りのカギであるということです。
まとめ
ワイキキの「ME BBQ」をめぐる商標トラブルは、単なる飲食店同士の争いではなく、観光地としてのブランド価値をどう守るかという問題を浮かび上がらせています。ハワイの飲食店経営者にとっては、ブランドの力を過小評価せず、早めに連邦レベルでの保護を検討することがますます重要になるでしょう。
#ハワイ経済 #ワイキキ #飲食店経営 #商標トラブル #ブランド戦略 #観光ビジネス
コメント