投資と地域再生の架け橋に?進化するオポチュニティゾーン制度に注目
私がハワイで暮らしていて感じるのは、島・地域ごとに発展の温度差があるという現実です。観光地や都市部は新しい開発が進む一方で、郊外や農村地域は時が止まったような場所も少なくありません。そんな中、米国で注目されている「オポチュニティゾーン(Opportunity Zone)」制度が、2025年の新税制案で再び脚光を浴びていることを知り、大きな可能性を感じました。
この制度は、低所得地域への投資に税制優遇を与えるもので、2017年のトランプ政権下で導入されました。今回の新法案では、2033年までの延長に加え、農村部への重点支援など、制度の方向性が大きく変わろうとしています。地域の発展に貢献する投資とは何か、そしてハワイの未来にどう関わってくるのか――この変化に注目すべき時が来ています。
オポチュニティゾーンとは?
オポチュニティゾーン制度は、経済的に恵まれない地域に投資を促進するための米国連邦税制優遇措置です。投資家は、キャピタルゲイン(譲渡益)を特定の「ゾーン」へ再投資することで税控除などの優遇を受けることができます。これにより、不動産開発や新規事業の誘致が行われ、地域活性化が期待されてきました。
もともとこの制度は2026年末で終了予定でしたが、今回の法案では2033年までの延長が提案され、長期的な開発計画が立てやすくなると見られています。
「農村部重視」への転換が大きな焦点に
新制度の最大の特徴は、農村部への投資を強く後押しする点です。具体的には以下のような変更が盛り込まれています:
- 農村地域に対する30%のステップアップベース(既存は10~15%)
- 新たに指定されるゾーンの33%以上が農村地域
- 改善義務(substantial improvement)の基準を100%から50%へ緩和
- キャピタルゲインだけでなく最大1万ドルの通常所得の投資も可能
これにより、今まで資本が流れにくかった農村地域でも、税制メリットを活かしたプロジェクトが実現しやすくなります。
条件と制限も変更へ
また、新たな定義により、対象地域は貧困率が20%以上または地域の中央値所得の70%以下の国勢調査区に限定される予定です。一方で、所得が中央値の125%を超える地域は対象外となる「ガードレール」も設けられる予定です。
加えて、税制優遇を受ける企業は、「売上の50%以上をそのゾーン内で発生させる」か、「主要業務がそのゾーン内で実施されている必要がある」とされており、IT企業やサービス業など一部業種では適用が難しいケースもあります。
投資のタイミングに空白期間が生じる懸念も
アドラー&スタッケンフェルド法律事務所のテリ・アドラー氏は、制度の更新によって2025年後半〜2026年の投資判断に空白期間が生まれる可能性を指摘しています。新たなゾーンの有効化が2027年1月からとなるため、現行ゾーンが終了する直前に投資家が様子見になる可能性があるとのことです。
投資ファンドの運用には課題も
新法案では、「ファンド・オブ・ファンズ(他の投資ファンドに出資するファンド)」が優遇対象に含まれていないことや、資本移転の柔軟性が限定的である点も課題とされています。より柔軟で実効性のある運用体制の構築が、今後の議論で求められるでしょう。
ハワイへの影響は?
ハワイでも、オポチュニティゾーンは既にいくつか指定されており、再開発プロジェクトや雇用創出のツールとして活用されています。今回の延長と制度変更により、特にハワイ島やマウイ島の農村地域での投資チャンスが拡大する可能性があります。例えば、観光依存からの脱却を目指す地域において、持続可能な事業や再生可能エネルギー関連の投資が進めば、大きな地域経済効果が期待できるでしょう。
まとめ:地域格差解消に向けた一歩
新しいオポチュニティゾーン制度は、単なる税制優遇にとどまらず、持続可能な地域開発や経済的自立支援を可能にする政策へと進化しようとしています。もちろん、制度にはまだ課題もありますが、正しく活用されれば、本当に支援が必要な地域への投資が促進され、地域格差の縮小につながるはずです。
私自身も、ハワイという美しい島で暮らす一人として、この制度が地域再生の起爆剤になることを期待しています。今後の議論と法案の進展に注目していきたいと思います。
出典
U.S. House of Representatives, Tax Legislation, May 2025
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